Pink Floyd

■ Animals

収録曲 1.Roundabout 2.Cans and Brahms 3.We have heaven 4.South side of the sky 5.Five per cent for nothing 6.Long distance runaround 7.The fish 8.Mood for a day 9.Heart of the sunrise
メンバー:Jon Anderson:vocal Bill Bruford:Drums Steve Howe:guitar Chris Squire:bass Rick Wakeman:keyboard
1971年録音

Animals

収録曲 1.Pigs on the wings(PartI) 2.Dogs 3.Pigs(Three different ones) 4.Sheep 5. Pigs on the wing(PartII)
メンバー:Roger Waters:bass Dave Gilmour:guitar Rick Wright:keyboard Nick Mason:Drums
1977年発売

 アニマルズは、狂気、炎に続いて発表されたアルバムで、人間を動物に喩え、直接的図式的な社会批判を展開しています。彼らの数多くの作品の中で、このアルバムは個々の楽曲とその配置、整合感、そしてトータル・コンセプト・アルバムとしての完成度が群を抜いています。

 彼らの作り出す音楽は、いずれもサイケデリックで憂鬱な浮遊感が支配しており、或る時には聴く者に見えない何かに対する畏怖の念さえ覚えさせることがあるようですが、反面、聴き込むに連れその感情は安堵感に変わってゆきます。不思議な暖かみのある音なんですよ。

 国内盤発売当時は、評論家、作家、写真家など5人のライナーが載せられていた。プログレッシヴ・ロックの範疇で語られるグループの中でこれだけ広範に市民権を得たグループは他にいないのではないでしょうか。彼らは、特にロジャー・ウォータース在席時の1970年代にメッセージ色の強い大作を残したが、脱退後、過去の名曲、ライヴ・パフォーマンスを集大成したサーカス的色彩のライヴ・バンドとなり、曲調は損なわれてはいないものの現在では所謂精神性は減退しているといわれています。

 全盛期の彼らを求めて聴くとすれば、見返り牛のジャケットの原子心母、エコーズが収録されたおせっかい、クレージーダイアモンドが収録された炎、プリズムが描かれた永遠のベストセラー・アルバムである狂気といったところでしょう。以下、これらについて、簡単に紹介しますね。

■ 1969年リリース More
 サイケデリックの旗手的存在であった彼らにぴったりだったのかどうか、麻薬と性が題材の映画のサントラです。小曲ばかりで構成されているものの、録音のバランスが着実に進歩し、音に丸みが加わっています。初のセルフ・プロデュース作品です。穏やかな曲調で目を瞑ると景色が広がりそうな不思議な浮遊感を湛えるサイラスマイナー、一際ハードなアプローチでアルバムの緩急を際立たせているナイルソングと、比較的地味ながら秀逸な曲が続きます。
■ 1969年リリース Ummagumma
 2枚組でライヴ1枚、スタジオ録音1枚という構成。収録曲は概ね8分から10数分にわたる大曲ばかりで、彼らの実験的前衛性が前面に出た難解なアルバムです。マンチェスター商科大学におけるライヴでは、天の支配、ユージン斧に気をつけろ、太陽賛歌、神秘が演奏されています。また、スタジオ録音の邦題を並べると、シンファス組曲、グランチェスターの牧場、毛のふさふさした動物の不思議な歌、ナロウ・ウエイ三部作、統領のガーデン・パーティー三部作。これを見ただけで、このアルバムが只者ではないことは、その筋の人にはピンとくるはずですね。
■ 1970年リリース Atom Heart Mother
 ピンクフロイドの名を不動としたプログレッシヴ・ロック・ムーヴメントの記念碑的作品です。オーケストラを導入した原子心母は非常に分かり易い雄大な主題を持ち20分という時間を感じさせないほどにスリリングに展開します。古典コーラスの導入もつぼを抑えていますし、オーケストラとバンドの絡み具合、特に、ギターの切り込み方が卓越しています。ヒプノシスによる見返り牛のジャケットもいい感じを出していますよね。原子心母はプログレファンのみならず全人類的にポピュラーな地位を得た初のプログレ作品なのではないでしょうか。全人類必聴&必携の一枚かも(笑)
■ 1971年リリース Meddle
 往年のプロレス・ファンならブッチャー入場のテーマ曲なので知らない人はいないという「吹けよ風呼べよ嵐」(>凄い邦題ですね)がトップに収められています。その後A面は小曲が並び、B面に20数分にわたるエコーズが収録されています。もう圧巻の一言!キーボードによって張巡らされた幻想世界。アーシーなギター、無骨なボーカル、つぼを抑えたベースとドラムスというフロイドの音を決定付けた楽曲です。耳に残る優しいメロディです。
■ 1973年リリース The dark side of the moon
 ロック・アルバムの売上が語られるときに必ず上位に登場するアルバムのひとつ。プログレ作品の中で、ここまで支持を得たものはほかにないかもしれません。フロイドは曲調が「普通」だから、肩肘張ったマニア・オンリーとなってしまわないところがいいですね。時計のベルで始まるタイムとそれに続く虚空のスキャット、レジスターの音を巧みに使ったマネー、リックライトのオルガン・ソロ、エニー・カラー・ユー・ライクなどなど単品でみても群を抜いてすばらしい曲が続くところ、それらを巧みに配置しアルバムとしての完成度が更に高いものとなっている点がこのアルバムの恐るべきところです。アルバム冒頭の心拍音はオーディオのチェックにも使われるそうです。
■ 1975年リリース Wish you were here
 デイヴ・ギルモア(g)の泣きのギターが渋いアルバム。冒頭とフィナーレに提示される狂ったダイアモンド。このブルース・フィーリングは、ピンクフロイドのひとつの側面を物語る重要な曲です。また、ロジャー・ウォーターズの精神性が色濃く出たアルバムでもあります。彼の詩は疎外をテーマにした物が多く、ここでは不在として登場します。人物・感情の不在ですね。ヒプノシスはカヴァーにうまく表現しています。信頼を確認する握手が形式化し無感情なジェスチャーと化している様子です。しかも、カヴァーに納められた写真はそれぞれ天地火水に対応しているなど相当に深い意味を持っているようです。この点はThe Works of Hipgnosis(宝島社刊)が参考になります。
■ 1979年リリース The wall
 ロジャー・ウォーターズの疎外に関する考えが究極に達した作品。哲学か妄想若しくは強迫観念にかられていたのか。ステージと聴衆との関係そしてその間に立つ壁と一人に男の人生とをシンクロさせた作りでになっています。この後、映画化され、更に近年ライヴ・アルバムも発売されたほどに支持者の多いアルバムですが、反面、ここまで病む必要はないしこの精神性に迎合するべきではないとも思います。音楽なんて、もっと気楽に聴いたほうが楽しいと思いますよ。誰も壁を構成する煉瓦のひとつに過ぎないんだと歌うアナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール2がヒットしました。 (2007.11)