Genesis

■ Selling England by the Pound

収録曲 1.Dancing with the Moonlight Knight 2.I know what I like 3.Firth of fifth 4.More fool me 5.The battle of Epping Forest 6. After the Ordeal 7.The Cinema Show 8.Aisle of Plenty
メンバー:Phil Collins:drums,percussion,vocal,Michael Rutherford:Bass,Electric Sitar,Stephen Hackett:guitar,Tonny Banks:keyboard,Peter Gabriel:vocal,flute,percussion,oboe
1973年録音

 ジェネシスは70年代に優れた大曲を数多く発表し、その後、80年代から90年代にかけても次々とポップなシングルヒットを放ちました。ピーターゲイブリエル在籍時とそれ以降、或いは、そして3人が残った辺りを分岐点に所謂ぷろぐれな音からポップな音に移行したために、ファンの層も2分されるのではないかと思います。初期の代表作としてブロードウェイが挙げられることが多いのですが、少々長すぎ、難解すぎると思います。コンセプトに執着するあまり、最も大切な曲そのものに際立ったところがないのです。彼らの傑作をだだ1枚挙げるなら、誰が何と言おうと「Selling England by the Pound」です。国内発売当時の邦題は「月影の騎士」でこれは1曲のタイトルからとったもの。実際のタイトルは「英国を量り売りする」といったシニカルなものであったせいか、フォノグラムからヴァージンに変わり邦題が全て外されました。個々の楽曲の質、コンセプトアルバムとしての纏まりが秀逸であるだけではなく、彼らの作詞方の分岐点としても重要な位置を占めるアルバムです。このアルバムを推す極めつけの理由は、「Firth of Fifth」が収録されているということです。トニー・バンクス作詞作曲によるこの曲は、非常に技巧的に作曲されています。頻繁に転調し拍子を変えつつも、流れは実に自然です。そして何より重要なことは、音楽そのものが究極かつ永遠の美を湛えていることなのです。
 このアルバムの他、ピーターゲイブリエル在籍時であればフォックストロット、フィル・コリンズがボーカルをとるようになった後の静寂と嵐なども秀逸なアルバムです。怪奇骨董音楽箱までの数枚は、際立った曲と他の収録曲との落差が大きくかなり聴き込まなければ分かりづらいものが多いのに対して、最近のものはポップ指向ではあるものの、それなりに楽曲の出来は整っているという傾向があります。 (2007.11)

  • 1970年リリース Trespass
     デビュー盤では、起伏に乏しいものの、一ひねりある不思議な曲を作り出すグループ、という程度の印象だったジェネシスが、ここで、一際、大きく前に踏み出した感があります。ピーター・ゲイブリエルのボーカルを装飾するための演奏ではなくて、ひとつのバンドの音としての纏まりが提示されたアルバムになっています。このアルバムの魅力は、終曲「ナイフ」に尽きます。この曲は、現在でも色あせない力強さと構成力を持っています。一方、他の曲は、ちょっと捉えどころがないものばかりです。
    ■ 1970年リリース Nursery cryme
     怪奇骨董音楽箱という邦題のアルバム。この邦題から明らかなとおり、冒頭のミュージカルボックスがこのアルバムのハイライトです。フィル・コリンズとスティーヴ・ハケットを加えたジェネシスは格段に表現力が豊かになり、トニー・バンクスのキーボードも全開で、プログレ然とした楽曲の数々は聴くものを釘付けにしてくれます。
    ■ 1972年リリース Foxtrot
     最高傑作か?とも思われる1枚。冒頭のウォッチャー・オブ・ザ・スカイズはメロトロン・サウンドの代表曲。そして、なによりの聴き所は、終曲20数分に及ぶサパーズ・レディです。覚えやすい主旋律がバックグラウンドで再現されたりと波のように入れ替わり登場する巧みな作曲による佳曲で、イントロなしのボーカルからいきなり始まり、7つのパートに分かれる組曲形式で演奏されます。
    ■ 1974年リリース The lamb ries down on Broadway
     LP、CDとも2枚組の組曲である魅惑のブロードウェイ。不良少年レエルが主人公のマンハッタンが舞台の物語。最高傑作のひとつに数えられることが多い作品です。・・・個人的には、70年代に聴くには十分衝撃的であったし時代と音との共有性による訴求力が感じられたのかもしれませんが、1曲1曲に単体で鑑賞に耐えるだけの構成力がないので、今聴くと少し冗長かなっていう感じです。
    ■ 1976年リリース Wind and wuthering
     ピーター・ゲイブリエルが抜け、フィル・コリンズがフロント・マンとなった第2作。この頃は、まだ、フィル・コリンズの声の抜けが十分ではなく、高音域になるとちょっと息苦しいところは否めませんが、楽曲そのものは珠玉の作品揃いです。イレヴンス・アール・オブ・マー、ワン・フォー・ザ・ヴァインと純プログレ大作が並び、最後にはまどろみ、静寂、アフター・グロウという、緊張感のあるインストルメンタルから優美なバラードへの展開が素晴らしい組曲が納められています。個人的には、最もよく聴くジェネシスのアルバムです。
    ■ 1991 We can't dance
     この頃になると、ジェネシスは、ポップ・アーチストとしても確固たる地位を築いていました。このアルバムからも、ノー・サン・オブ・マイン、ジーザス・ヒー・ノウズ・ミー、ドライヴィン・ラスト・スパイク、ウイ・キャント・ダンスというヒットを飛ばしています。しかし、彼らはポップな表情の楽曲においても、プログレッシヴな要素は忘れていないようで、楽曲のそこここに渋い表情をつけています。キーボードのトニー・バンクスの能力によるところが大きいのでしょうが、終曲のフェイディング・ライツはそんな彼のキーボードワークが全面にフィーチャーされた絶品です。