
| A Triggering Myth |
■ A Triggering Myth 収録曲 1.Living Out loud 2.The Delicate Balance of Coincidence(6:27) 3.Swimming With Sharks (8:45) 4.The Biology of Doubt (6:02) 5.When Suddenly I Am Old and Start to Wear Purple (1:43) 6.The Thin Edge (5:54) 7.The Eye in the Looking (4:40) 8.We Think About Our Thinking (1:59) 1990年 ア・トリガリング・ミスは、Rick Eddy(keyboards,all guitars,assorted sundry instruments,titles,poetry)とTim Drumheller(keyboards and programming,assorted sundry instruments,production)のデュオで、IE Magazine Interview/Spring 1994/Issue #6によれば、彼らの経歴というか音楽的バックグラウンドは以下のようです。 リックは、10代の頃3,4年間トランペットを習い、大学で2年間ギターとピアノを専攻、そして15歳から20代半ばまで、ヘンリー・カウに影響されてロック・バンドで演奏していました。そもそも音楽をはじめたきっかけはビートルズで、70年代のプログレッシヴ・ロックの洗礼を受け、特に、バンコ、PFM、アリア、アルティ・エ・メスティエリなど、イタリアのバンドを中心に、その他あらゆるバンドの演奏を聴き、その後、20世紀初期のバルトークらの古典音楽のほか、非常に多くのジャズも聞いたそうです。一方、ティムは、8年間独学でピアノを練習し数年間に渡りいろいろなロックバンドで演奏した後、ジャズやフュージョンの洗礼を受け、さらにユニヴェル・ゼロやクリムゾンの影響も強く受けたのことです。 1983年にリックはリッチモンドに移り住んだのですが、そこにはちょっとしたジャズのシーンはあったもののプログレッシヴ・ロックのシーンはなく、そこでリックは、レコードショップに備え付けてあったミュージシャン用の掲示板に、リッチモンドにプログレッシヴ・インストルメンタル・ミュージックに興味のある奴はいないのか?という書き込みをしたところ、数日後、ティムのルームメイトから興味のある奴が同居しているとの電話が掛かってきてティムに出会い、以来、リックはティムとデュオを組んでいるということです。 それから、ア・トリガリング・ミスの名称ですが、これは、リックの命名で、リックによれば、彼は、哲学、精神学、事物の実存や現象に強い興味を持っており、バンドの名前は究極の真実とは何かに関する私見の表現であるとのこと・・・「社会的迷信を引き起こすもの」と解される彼らのバンド名は、皆目意味不明ながら、相当に深い意味を持っているようですね。 1990年に録音されたア・トリガリング・ミスのファースト・アルバムですが、このアルバムは、今となっては見事に廃盤です。Between Cagesを聴いてこの存在を知り、マーキーから出版されたアメリカ集成に掲載された写真に心を惹かれ、新宿界隈は元よりレーザーズ・エッジからZ-Shopまで探し回ったのですが、どこを駆け回っても入手できず、2000年当時、永遠に聴けないかと諦めかけていた1枚だったんですよ。 後になってスウェーデンのRecord Heavenで暫くの間売られていたことが解ったのですが、私の場合は、幸運にも、リック本人にメールで問い合わせてみたところ、リックの好意により入手することが出来ました。 しかし、リックの話しに寄れば、残念なことに、このアルバムは、もう2度と発売しないらしいです。機材や技術その他諸々につき未熟な時期の作品であるということがその理由だということです。しかしながら、一ファンとして拝聴させていただくと、どのアルバムよりも透明で薄く素朴ではあるものの、歪と捩れの引金が確かに感じられる音がそこにあるような気がします。これは、原石です。グループ名が冠されたファースト・アルバムには、思索的サウンドの原点が詰まっています。 (2007.11)
■ Twice Bitten収録曲 1.The Perils of Passion (5:34) 2.Myths(Parts I-VII)(21:30) 3.Twice Bitten(1:27) 4.Falling Over Fear(6:05) 5.Holding Up Half the Sky(3:40) 6.The English Lesson(4:44) 7.The Noun 8.The Verb 9.Suddenly South(7:00) 10.P.S.(3:02) 1993年 ファーストから3年を経た1993年に発表されたセカンド。数多くのゲスト・ミュージシャンを加えて制作されているこのアルバムも、現在のところ廃盤です。しかし、リックによれば、これは良いアルバムなので、再発を予定しているとのことでした。その後、どうなってるんでしょうね。期待して待ちましょう。 ファースト・アルバムと比較すると格段に構築性が増し、音に厚みが加わっています。ジャズ・ロック系のリズム、そして、ジャズと現代音楽がブレンドされたピアノを中心にホーンとブラス系のシンセやエレクトリック・ギター等によって味付けされた楽曲が中心で、室内楽的にクールなサウンドがアルバ有全体に散りばめられています。 2曲目の21分を越えるMythは圧巻。ここで聴くことが出来る見事なオーケストレーションの手法からは、イタリアの先人たちの楽曲が礎となったものであろうことは容易に想像されるものの、楽曲を支配する漂う不安感は、彼ら独特の世界観が既に完成されていることを物語るものです。自作に繋がる礎のような作品です。 (2007.11)
■ Between Cages収録曲 1.Habile(4:27) 2.Deftly Dodging(5:18) 3.Squdge(10:11) 4.Il Voce(In tribute to the late Demetrio Stratos)(6:13) 5.Midiots,Vidiots and the Digitally Delayed(3:27) 6.Between Cages(Suite) i)The Moment ii)Rattling Our Cages iii)Unencumbered iv)Fears Spent Chasing v)Over and Under vi)Badgered vii)Rattling Our Rages(21:51) 1995年 アコースティックが一際際立つ繊細且つ耽美な音です。彼らの創り出す音は、どちらかといえばユニベル・ゼロなどのチェンバー系の音に近く、線は細いけれども、深淵に引きずり込むような重さを伴っています。しかも、これに加えこのアルバムはインド音階などを巧みに取り入れ、更に変拍子を多用して技巧的に作曲されているばかりか、キメのフレーズが随所に配され、「プログレッシブ・ロックがロックであること」を再認識させてくれるものだといえるでしょう。 楽曲の傾向としては前作の延長線上にあるものの、更に完成度が増している。・・・というか、彼らの音楽は、このアルバムにおいて、ひとまず完成したのではないかと思えます。実にクール且つ自然な音。彼らの完璧なオーケストレーションと完璧な演奏を聴くと、真夏であっても涼しげな感触に見舞われます。一般に「冷たい音」と評される彼らの音から受ける印象は、冷徹さではなく、深い峡谷を分け入り、限りなく透明な水を湛える谷川の源流にまで溯り、水源となっている鍾乳洞の奥深くで、どこからか微かに差し込む薄青色の光の中で滴の滴る音を聴いている、というそんな情景に喩えられるものです。実に美しい本サイト一押しのア・トリガリング・ミスの最高傑作です。 (2007.11)
■ The Sins Of Our Saviours収録曲 1.The Awful Truth(7:52) a) The Bitter Pill b) The Awful Truth 2.Bagliore (Glimmer)(5:11) 3.His Maddening Certainty(10:50) 4.Not a River(4:18) 5.The (Ag)Nostic Gospels(4:10) 6.Stato Di Confusione Avanzata(State Of Advanced Confusion) (5:13)7.The Dust On Mothers Bible(8:03) 8.When Faith Transcends Reason(2:42) 9.Ken Who?(1:48) 1998年 前作のIl Voceの解答編とでも言える変化の見られるアルバムであす。前作のIl Voceはアレアのヴォーカリスト故デメトリオ・ストラトスに捧げられた曲であったわけですが、本作では、プログフェスト95で出会ったというイタリアのデウス・エクスマッキナのAlbert Piras(vo),Alessandro Bonetti(vln)を、そしてMoe Vfushateel(dr)を加え音に厚みと深みを増しています。 静と動の巧みな使い分けのうち動の部分の迫力が極端に増したのがこのアルバムの特徴です。基本的な構築性に変化は見られないもののジャズ、クラシック、チェンバー、ロックなどが融合・調和したサウンドは、特に狂気を感じさせるアルベルトのヴォーカルを交えて危険なエネルギーを発散するまでに高まっています。 従来、ア・トリガリング・ミスは、リック・エディの詩をジャケットに掲載しつつも、ヴォーカルを導入することはなかったのですが、本作では、うち2曲Bagliore (Glimmer)とStato Di Confusione Avanzata(State Of Advanced Confusion)にイタリア語によるヴォーカルを導入しています。このような、一風変わった、しかも病的な音を作り出す人たちであって、しかも、その筋のオタクであったわけですから、リック又はティムが、デメトリオ・ストラトスの妄信的なファンであって、彼らの作り出す音楽に導入するヴォーカルはそういうタイプのイタリア人と最初から決めていたのかもしれないということは、このアルバムを聴くと容易に想像がつきます。そもそも、他の3作におけるポエット・リーディングについても、リックとティムの頭の中にはストラトス的なヴォーカルラインが存在していたのかもしれないですね。 さて、このアルバムは、ヴォーカル導入による音の変化によって迫力を増したという点では成功していると思いますが、一方、狂気又は病的な側面が強調されたという点においては、過去のアルバムを聴いて彼らの音楽のファンになった人たちの意見を二分するのではないかと思います。音楽的に進化した反面若干聴き辛くなったという印象です。 (2007.11)
■ Forgiving Eden収録曲 1.Forgiving Eden(43:26) 2002年 前作でアレアのデメトリオ・ストラトスのような変態的なヴォーカルを加え、この後、どのような方向に進むのかと少々心配していたのですが、今回は、3rdのBetween Cagesの延長線上の音に戻っています。個人的に、前作は前衛に傾倒しすぎて少々難解、というか聴き辛かったこともあり、なんだか一安心という感じがしました。 きっと、彼らの音は、デビュー当時から既に確立されていたんですよ。ピンクフロイドやイエスやクリムゾンが独自の音世界を構築している以上に、トリガリング・ミスの音世界は無機的な帳を張り巡らせたような独自の他と相容れない音世界なのだと思います。前作はそのベクトルがちょっと違う方向を向いてしまったということだったのでしょう。 さて、3rdが出た頃まではあまり気にならなかったのですが、彼らの音楽のモチーフは、かなり病んでいますね。それは、ジャケット・アートの変遷を眺めてみると顕著に現れている。彼らは、静的な物、死、フリーズした世界に美しさを感じているのではないかと思います。1990年にデイヴィッド・リンチ監督の「ツイン・ピークス」というドラマがあり、それは、ローラ・パーマー殺人事件を解き明かすミステリのようでありながら実はオカルトでもあったという・・・。それは、美しい絵とは裏腹に、観ているうちに精神的に酷く苦しめられるドラマでした。今なお、根強いファン層に支えられているものの、嫌悪感を抱いた人たちも相当の数に上るに違ありません。そうした病んだ対象に対して耽美を求める世界観・・・トリガリング・ミスのこのアルバムを聴くと、そうした世界に吸い込まれていきそうな気がして背筋が凍りそうになります。 話は、かなり飛ぶのですが、ドリームシアターが、メトロポリスPT2、トレイン・オブ・ソートとかなり根暗な題材に進んでいるように、道筋は違うものの、トリガリング・ミスが目指すゴールも同じなのではないかとも思えるのです。・・・病んだアメリカの象徴・・・なんでしょうかね。トリガリング・ミスのこの音楽は、深い井戸の底に潜む魑魅魍魎のために演奏されている暗鬱な音楽のようです。はるか上を見上げてみると、小さな円の中に青空が見えていて、そこにはシンディ・ローパーやブライアン・アダムスの音楽が陽気に流れている別世界があり、そうしたことは井戸の底からかすかにわかるのだけれど、帳の力が強すぎてなかなか外界に出ることが出来ないでもがいている・・・といった感じでしょうか・・・リスナーの自虐的な感覚に訴求する音楽だと思ます。 ・・・と、まぁ、ちょっと生真面目に熟考しながら聴くとそんな感じなのですが、もう少し気楽に、変拍子を多用したシンフォニック・ロックとして純粋に音を楽しもうと思えば、フォーギビング・エデンの完成度は相当のものです。 まず、アルバム全1曲、これがプログレ・ファンを強固にキャッチしますよね(笑)。CDトラックはパート1から8までに分かれていますがあくまで1曲です。アドリブらしき部分は皆無、そもそもブルージーな感覚はありません。導入部分で聞けるブラシによる4ビート・ジャズもエモーショナルな感覚は一切なく無機に徹しています。 前作までと比べると、Scott McGillのギター、Vic Stevensのドラムスが加わっているため、全般に安定的にロック色というかライヴ感が加味されています。このため、無機的な音の塊が、よりパワーを伴ってリスナーに伝わってくる感じがします。 さらに、変拍子と作曲の緻密さという点においても、格段に進化しています。アルバムBetween Cagesの1曲目のHabile、この冒頭の変拍子によるピアノのフレーズは、これまでに彼らが作った楽曲の中で個人的に最も印象深かったのですが、今回のフォーギビング・エデンでは、そこにみられたスピーディーで思索的な演奏が43分強に渡って全面で繰り広げられているようです。その後の最新作はまだ未聴なので、とりあえず、ここまで^^; (2007.11) |