title

Steve Walsh

 スティーヴ・ウォルシュは、カンサスのリード・ヴォーカリスト兼キーボーディスト。彼のソロ作品は、カンサス時代のスキーマー・ドリーマーがやや散漫な印象だったものの、以降ストリーツ時代は非常にノリのいいハードロックを聴かせ、2000年に発売されたグロッソラリアは、マグナカルタからのリリースであり、同レーベルお抱えのトレント・ガードナー(マジェラン)がスティーヴ・ウォルシュとともにプロデュースを行っている。そのようなことから、当然、これまでのスティーヴ・ウォルシュのアルバム中、最もシンフォニック・アレンジが緻密且つ大胆であり、SEを多用した録音の凝りよう、それに楽曲の緊迫感にも鬼気迫るものがある。トラック3のメタル・ファンクでは、ストリーツとマジェランが合体したような音を聴かせるが、全体を通すと、マジェランの無機的な音世界の中でカンサスが人間臭を放っているという印象で、かなりいいバランスで2つのバンドの良い部分が合体していると思う。(2003.11)
Schemer Dreamer
収録曲 1.Schemer dreamer/That's all right(5:23) 2.Get too far(4:30) 3.So many nights(4:21) 4.You think you got it made(4:20) 5.Every step of theway(8:32) 6.Just how itfeels(3:40) 7.Wait until tommorow(5:59)
1980年

 1980年、モノリスが発売された後、たて続けに2枚のソロ・アルバムが発売された。これは、そのうちの1枚。最初に発売されたソロ・アルバムである。レコーディングは79年のはじめに既に終わっていたものの、Kansas本体のアルバムの発売とのタイミング調整によりおよそ10ヶ月間発売が遅れていたのである。レコーディング・メンバーは、Kansasからはフィル・イーハート、リッチー・ウイリアムス、ケリー・リヴグレンが参加している。今から思えば面白いのが終曲にスティーヴ・モーズが参加していることであろうか。モーズらしいテクニカルな音の並びが楽しめる。アルバムに収録された各曲の内容は、ほとんどがシンプルなロックンロールである。Kansasの看板を背負ったスティーヴ・ウォルシュが歌っているので辛うじて思慮深そうに聞こえる。LP発売当時の解説には、「A面4曲はストレートなロックン・ロールが主体、B面にはグループのサウンドに繋がるドラマチックな構造のオーケストレーションを聴かせる曲が並ぶ(>仲邨杳一氏)」旨記載されていたので当時かなり聴き込ませていただいたが、Every step of the wayの演奏時間が8分に及ぶこと中間部にキーボードのクラシカルなフレーズを用いたチェンジが8小節程挿入されていることを除けば普通の曲である。このようなことから、当時、そう頻繁には回さなかったように記憶している。唯一、私がCD化していない1枚である(笑)。・・・といっても曲の出来はいいし悪くはないんだけどね〜。どちらかというと、Kansasサウンドからは外れた趣味的アルバムとして聞こえてしまうということなのである。バラードなんか、かなりメランコリックだしね。しかし、逆にKansasサウンドの構成力や演奏の緊迫感を取り払って、スティーヴの声だけで十分っていうような妄信的な方には外すことができない1枚だろう。
 ・・・しかし、このジャケットの趣味の良さといったら(笑)どうにかならなかったんだろうか?裏側の写真なんて、西部警察にゲスト出演して「課長行ってきます。」と言っているかのようである。右手のキメ・ポーズもイカシテルしね。 (1999.4)
King Biscuit Flower Hour Presents Streets
収録曲 1.If love should go(5:11) 2.Move on(3:53) 3.One way street(5:49) 4.Everything is changing(4:57) 5.Cold hearted woman(3:33) 6.So far away(4:49) 7.Lonely woman's cry(5:35) 8.Shake down(4:55) 9.Fire(11:46) 10.I'm not alone anymore(5:54) 11.Streets of desire(5:09)
1983年録音
(注)CDでは1曲目にIf love should goのイントロないしライヴのオープニングのバイクのエンジン音が22秒入っているため、CDプレイヤーでは12曲目までカウントされる。

 1983年10月23日、King Biscuit Flower Hourのためのライヴ音源。スティーヴ・ウォルシュが一度Kanasasを脱退したのはVinyl Confessionのリハーサル中なので1981,2年頃だと思われる。その後パワーでKansasに復帰する1986年までの間、スティーヴはビリー・グリアーらとともにStreetsを結成していた。演奏していたのは元気一杯の典型的なハードロックである。Streetsのスタジオ・アルバムは、1983年に1stが、1985年にCrimes in Mindが発売されているので、このライヴは1st発売直後のものと思われる。スタジオ盤未聴のため、今のところ、この辺りの詳しいところは不明である。
 さて、この音源、実際に聴くまでの間、ジャケットが今一冴えないことと、カーシュナー時代のソロが今一つ好みではなかったこともあって、あまり、期待をしていなかったのであるが、聴き進むに連れて、考えを改めずに入られない程、凄い出来のアルバムだということが明らかとなった。ソロ作品という先入観で聴こうとしたのが悪かったのかもしれないが、これは、立派に一つのバンド・ユニットとして完成された音である。ポップスとメタルの中道路線がヒットを飛ばしていた1980年初期から中期に登場しただけあって、Streetsもこの路線であるが、ライヴのせいだとは思われるものの、70年代のツェッペリンやパープルにあったロックバンドらしい粗さないし荒さが程よく感じられるところが所謂産業ロックと一線を画している。スピードもタイトさもテクニックも申し分ない。9曲目のファイアーは11分に及び、ギターソロ、ドラムスソロを挟みメンバー紹介も行われ、ライヴの雰囲気にぐいぐいと引き込んでくれる。
 何より、Kansasファンが注意深く聴かなければならないのは、このStreets Liveの音とPowerの音とが限りなく近似している点である。Streetsの音は疑いなくPowerに継承されている。Streetsは、マス・メディアの手によっては国内に十分紹介されていないものの、Kansasの音の流れを理解する上で非常に重要な位置を占めるグループだったのである。 (1999.11)
Glossolalia
収録曲 1.Glossolalia(5:20) 2.Serious wreckage(6:01) 3.Heart attack(4:18) 4.Kansas(9:00) 5.Nothing(3:08) 6.Haunted man(5:35) 7.Smackin' the clowns(10:05) 8.That's what love's all about(5:05) 9.Mascara tears(7:05) 10.Rebecca(5:15)
2000年録音

 2000年はカンサス・ファンにとっては、またとない発売ラッシュの年だ。ご本家の新作、ケリー・リヴグレン、そして、このスティーヴ・ウォルシュのソロ・アルバムである。この3作のうち最も後のリリースとなる本作は、満を持しての登場というか、オーディオ・ヴィジョンでカンサスを去った以降のスティーヴの方向性が貫徹されたものという印象が強い。参加メンバーは、Mike Slammer(g)、Billy Greer(b)のStreetsにTrent Gardner(key,trombone)らマジェラン・マグナカルタ関係。メタリック且つストレートなストリートの音とねじくれてしかも重厚なマジェランの音とを自然合体させた音を想像すると、今回のソロアルバムの音は容易に想像できる。少々難解。少々ポップ。少々メタル。聴き手にとっては一回聴いただけで輪郭が見えてくるほど易しいアルバムではないが、トレント・ガードナーとスティーヴ・ウォルシュによる作曲&プロデュースによって組み立てられた仕掛けはかなり奥深そうで、スルメを味わうように鑑賞すとよいかも。 (2000.9)


Kansas
Kerry Livgren
Robby Steinhardt